ピンときたら吉日

思ったこと、感じたこと、日々発信。

【レビュー】「映画ー羊と鋼の森」に普遍的な仕事の本質を見た。

6月8日に映画公開された「宮下奈都ー羊と鋼の森」を読んで、すこし文章を書き残したくなったので。昨日映画も見ました。

 
映画レビューをみてみると、「主人公の心情と森の描写のリンクがよく分からない」だのなんだの、いろいろと酷評もあるが全体的にはすごく評価も高いようで。

 

調律師としての仕事を描いた新鮮さ、想像力を掻き立てる美しいピアノの音の描写など、この作品の魅力と思われる要素は枚挙にキリがないが、それはそれで良いとして、僕が感じたのは「主人公・戸村直樹を成長させるプロの仕事の哲学」である。

そしてそこには、調律師だけではなく、すべての仕事に普遍的なエッセンスがが含まれているような気がしたのである。

 

音楽・ピアノ・調律の話は置いて、そちらをピックアップして紹介していきたい。

 


技術も大事だけど、まずは意思の疎通だ。


柳さんが外村にお客さんとのコミュニケーションの文脈で、「ゆでたまごの硬さ」の例え話を交えて語るシーンがある。

 

やわらかい音にしてほしいって言われた時も、疑わなきゃいけない。

どのやわらかさを想像しているのか。

必要なのはほんとうにやわらかさなのか。技術はもちろん大事だけど、まずは意思の疎通だ。

 

「やわらかい音」の部分を読み替えてみると、どんな仕事にも当てはまるのではないだろうか。僕はシステムエンジニアをやっているが、先輩からよく言われる。

「お客様が求めているのは、本当にこの業務のシステム化なのか。システム化を求めているのか、それともその業務自体の改善が必要なのか、まずはそこからだ。」と。

結局仕事は相手のためにあり、相手の期待に応えることに他ならない。だからこそ、意思の疎通が大切なのだろう。調律師に限らないのだ。

 


・どんな仕事にも「羊と鋼の森」がある。


何かの仕事を極めるには、その「森」のなかにどっぷりと浸かり、一歩一歩踏み締めて、時に迷い、立ち止まりながら、それでも前に進むしか無いのだろう。そして、その深い森の中を進むための原動力になるのは、なによりもその仕事が好きである、というう気持ちなのかと感じた。


僕の仕事もそうだ。ITの仕事は、本当に色んなことを勉強しなくちゃならない。学んだ技術は陳腐化する。日進月歩の世界である。


あまりにも多くのことがありすぎてどこから手を出していいのか分からない。そんなときに思い出すのは、柳さんのこの言葉。


「才能ってのは特別なことではなく、それに熱中できる思い、執念のようなものなんじゃないかな」

 まだまだ仕事を完全には好きにはなれないが最近ようやく「これで食べていくしかないんだ」といった、決意・覚悟のようなものが固まってきた。

柳さんの言葉はその気持ちをさらに確かなものにさせた。

 

 

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

以上、こんな感じで纏めてみました。読後感も爽やかで、単純にストーリーとしても面白い。

また読み返したいと思えるような作品だったなあ。

 

 

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)